犬は肉食?オオカミとの摂食行動の違い

Photo by Tambako The Jaguar - Eating white wolf(2011) / cc by-nd 2.0

犬の祖先はオオカミ、でも・・・

犬の祖先はオオカミなので、野生のオオカミと同じく肉を食べていればいいんだ、といった考えもありますが、これは正しいようでいてそうではないというか、全ての犬に当てはめるには少し無理があるように感じます。



ポイントは家畜化

犬は家畜化以来途方もなく長い時間を人間と共に過ごしてきました。少なく見ても1万数千年以上のあいだは人のそばで生活してきたのです。
その中で犬は野生のオオカミとは違う生活習慣を送り、人間の多彩な食生活に触れ、順応してきました。

家畜化以前はヒトの残飯、主に動物の肉、植物や果物を食べていたと考えられます。

家畜化初期はヒトとともに狩猟に駆り出され、時には捕らえた獲物の肉を与えられていたことでしょう。

以降はヒトの発展に合わせてそれぞれの土地の風土とヒトの生活習慣に順応していき、様々な食生活に対応していったと推測されます。

※犬とオオカミについてもう少し詳しく知りたい方はこちらをお読み下さい ↓

イヌとオオカミの関係|犬と狼は同じ種?犬の祖先は狼?



野生のオオカミとは違う食生活

石器時代の終わりから文明の初期にかけて農耕と牧畜が始まります。

農耕の初期は狩猟と並行して行われていましたが、農耕が独立するようになるにつれて、イヌの主食は穀物を中心としたものに変化していきます。
おそらくこの環境では肉はヒトにとっても普段手に入らない贅沢な食べ物で、必要な時にだけイヌに与ていたと考えられます。

牛や羊などを飼養する牧畜生活の中では、牧畜動物と同じような食べ物、穀物やイモ類を中心に、時には牧畜動物の肉やミルクを与えられるようになりました。

初期のイヌはオオカミと同じく肉食で、体格もオオカミに近く、肉だけを与えるとなるとヒトが食べる分がなくなります。
イヌとの共同生活を続ける中で、ヒトは次第にイヌの幅広い摂食の傾向を理解し、イヌが栄養失調にならない程度に肉の給餌をコントロールしながら、給餌の選択肢を増やしていったと考えられます。

この段階からイヌは野生のオオカミとは違う食生活を送るようになります。
野生のオオカミもヒトの残飯を漁ることがありますが、基本的には肉食で、イヌほど幅広くいろんなものを食べるわけではありません。

イヌはこの ”幅広くいろんなものを食べる” 性質があったからこそ、家畜としてヒトに迎え入れられ、以降もヒトとともに発展していったと言えます。



さらなる広がり

漁業を生活の糧として暮らす人間のそばでは魚を食べ、積雪地帯で人荷の運搬をするソリ犬は干し肉を食べ、遊牧民と行動を共にする遊牧犬は植物や乳製品を口にし、ヒトの食生活の幅の広がりに比例するように、その残飯を食べるイヌの摂食の選択肢もどんどん広がっていきました。

時には栄養失調やアレルギーを経験し、食べ物に起因する様々な病によって淘汰され、それらに打ち勝ちながら、イヌは力強く生きていきます。

中世に入ってしばらくするとイヌのタイプが増え、今日の犬種の元となる多くの種類が誕生し、イヌは愛玩動物としてより広く深く浸透していき、一部では家族同様に扱われ始めます。

貴族や地主などの富裕層の間ではイヌの美しさが競われるようになり、18世紀の中頃になるとイヌの品評会が開催され、19世紀に入るとこの文化は次第に庶民にも広がり、愛好家の間でドッグショーとして本格化していきます。

このような環境では、イヌの外観に関わること、毛の色や艶、毛並みや肌の美しさなどに気を使い、栄養価や成分を意識した食事を与えていたと思われますが、製品としてのドッグフードが普及するのはまだ少し先の話になります。



ドッグフードの誕生

1860年にイギリスで、世界で初めてのドッグフード事業が始まります。
アメリカ出身のジェームス・スプラットが製造した犬用ビスケットはスポーツ犬の育成に熱心な英国紳士など富裕層を中心に大ヒットし、成功を収めたジェームス・スプラットはその後アメリカに帰国して、1870年にアメリカでのドッグフード事業を開始します。

以降世界各地でドッグフードが事業化され、日本では1960年に初の国産ドッグフード「ビタワン」が協同飼料株式会社(現在の日本ペットフード株式会社)より発売されます。
イギリスでドッグフード事業が始まってからちょうど100年後ですね。

発売当初のビタワンは粉末状で、給餌する際に水に溶いて練らなければならず、価格も当時としては高価であり、そもそもドッグフードが世間に認知されてなかったので、一般に普及するまでには時間がかかりました。

その後ビスケット状のビタワンの開発を経て、アメリカから輸入したエクストルーダー(押出成形機)が導入され、1964年に現在のドライタイプの形状に近いペレット状のビタワンが発売されました。

保存が利き、手間がかからず、栄養バランスの取れたドッグフードは次第に世間に受け入れられ、さらに大量生産によって大幅に価格が抑えられたことで、広く一般に普及していきました。

※ドッグフードについてもう少し詳しく知りたい方はこちらをお読み下さい ↓

ドッグフードの歴史|発祥から現在



人のいるところには犬がいる

人がいるところには犬がいる、というのは昔から変わりません。
宗教的な理由などでイヌが嫌われてきた地域でも、その社会のすぐそばには必ずイヌがいました。

オオカミはどうでしょう?
イヌとは違い、ヒトとは距離があるようです。オオカミはヒトと迎合することを選ばず、ヒトのパートナーとして選ばれず、あくまでも野生の中で生きてきました。

まれにヒトの残飯や農作物を漁ることもありますが、多くは純粋な肉食動物としてその生涯を全うします。
イヌがヒトとの共同生活を始めてからもこのことには変わりなく、現代のオオカミも古代のオオカミと変わらない摂食行動を取っています。

オオカミはヒトの生活圏から排除され、イヌに縄張りを奪われ、次第に淘汰されていきました。

それとは逆にイヌはヒトに愛され、利用されることで進化し、多種多様な犬種を発生させながら、人口と比例するようにその頭数を増やしてきています。

ではなぜイヌはこれほど順応し、ヒトとともに繁栄することができたのでしょうか?
その理由の一つとしてイヌの気質、人懐こい性格や従順さ、ヒトの期待に応える利口さなどが挙げられますが、もう一つの理由としてはやはり、幅広くいろんなものを食べる性質が挙げられるでしょう。

嗜好の多様性、摂食可能な食べ物の融通性、アレルギーに対する耐久性と対応性、新しい食べ物を口にする積極性と柔軟性、これら全てがオオカミより優れていて、すなわち家畜として扱いやすい食習性である、と言えます。

野生の動物が生き残るための重要な食戦略、食べていいものと悪いものを判断する能力をさらに押し進め、食習性においてもヒトに近付いていき、見事に順応したのです。



結論

このように、犬とオオカミは互いに非常に近いようでいて全くもって遠い存在でもあります。
だって、トイプードルが鹿や猪といった野生動物を追いかけ回して捉えて捕食するなんて想像できないでしょ・・・。

現実的にトイプードルがオオカミと同じ獲物の肉を、オオカミが食べ残した後ででも、そのままかぶりつくことはないと思います。そしてその食生活を続けて健康でいられることもないと思います。食以外は人間に保護されていたとしても。

やはり、犬の祖先がオオカミであるとしても、現代の犬は野生のオオカミとは違うのです。

とは言っても、犬は雑食でなんでも食べられる、というわけではもちろんありません。
犬が食べてはいけないものはたくさんあります。
※詳しくはこちらの記事を参考にしてください ↓

危険!犬に与えてはいけない食べ物|的を絞ってわかりやすく解説



特に現代の犬はひと昔前と比べて寿命も伸び、高齢犬が増えるに伴って病気のリスクも高まっています。
また、今まで自然界に存在しなかったような人工的な物質や、それに対応するアレルギーなども増えています。
犬種によっては遺伝的に体が弱かったり、敏感であったり、神経質であったり、特別に気を使わなくてはならないこともあります。

現代は、犬にとって新たな局面に差し掛かっている時代と言えるのかもしれません。


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