イヌとオオカミの関係|犬と狼は同じ種?犬の祖先は狼?



犬と狼の深〜い関係

普段私たちの身近で生活している犬と、野生の狼との間には、とてもとても強くて、切っても切れないような密接な繋がりがあります。

ひと口に犬と言っても、セント・バーナードや土佐犬のような超大型犬から小さなトイプードルやチワワといった超小型犬まで、体の大きさや見た目や性格まで様々な犬が存在します。
それら全て、多種多様な個性を持つあらゆる犬種がひとくくりにされて「犬」と呼ばれていて、その多様性と広がりは全ての哺乳類と比べても傑出しています。

では、そんな個性豊かな犬たちと野生の狼は、一体どう緊密な関わりを持っているのでしょうか?



犬と狼は同じ種?

分類学の観点から見ると、私たちの身近にいる全ての犬(イエイヌ)はネコ目(食肉目)-イヌ科-イヌ属に分類されます。
同じく狼もネコ目(食肉目)-イヌ科-イヌ属に分類されます。

動物学の参考図書「Mammal Species of the World, 3rd edition(2005)」による新分類(現在日本の環境省による分類もこれに基づいています)では、イヌ属はタイリクオオカミ(※アメリカアカオオカミを含む)、コヨーテ、ヨコスジジャッカル、キンイロジャッカル、セグロジャッカル、アビシニアジャッカルの6種に分類されます。
狼(オオカミたち)はこのうちのタイリクオオカミに含まれます。

タイリクオオカミ種はさらにニホンオオカミやホッキョクオオカミなど多くの亜種に細分化されますが、イエイヌはそのうちの一亜種とする見方が現在では主流です。
つまり犬も狼も、ネコ目(食肉目)-イヌ科-イヌ属のタイリクオオカミ種にカテゴライズされているのです。同じ種ですね。

また、犬と狼、及び同じイヌ属のコヨーテやジャッカル類は互いに交配が可能で、自然界では古くからそれぞれの交雑種が存在します。イヌ属の動物は種の垣根を超えてさらなる広がりを持っているのです。

とはいってもイエイヌ以外のイヌ属の動物たちにはあまり多様性がありません。歴史のある時点からイエイヌは急激に進化していき、全ての哺乳類の中でも唯一と言えるほどに圧倒的で多彩な広がりを見せてきました。今日の犬種の多さがそれを物語っていますね。

一方でオオカミは古代から姿形や性質をほぼ変えることなく現代まできています。
犬と狼の多様性の違いには人間による「家畜化」が深く関係しているのですが、これについては別の機会を設けて、改めて解説したいと思います。

同じネコ目(食肉目)-イヌ科の犬と狼、元は同じだったのか?
犬と狼のこれまでの歩みを遡っていけば、その答えが見つかるかもしれません。



犬の祖先は狼?

犬はいつから犬だったのか、どこからやってきて、どのように進化してきたのか。この問題はダーウィン以前から人々の好奇心を掻き立てる興味深いテーマだったようです。
考古学や形態学、生物学など、あらゆる観点からのアポローチにより、長い時間をかけて研究され、様々な議論が交わされてきました。

全ての種類の犬の祖先が単一の野生種なのか複数の野生種なのかで意見が分かれ、イヌ属の動物が種を超えて交配可能なことがこの問題をより複雑にしていました。

1900年代にイヌの遺伝学的研究が始まり、1990年後半から2000年初頭にかけては特定の DNA配列、特にミトコンドリアDNAの部分配列を対象にした解析が進められ、2005年には雌のボクサー犬の全ゲノム解読によりイヌゲノムの全容が明らかにされるなど、近年急速に発達した科学技術や最先端の設備を用いた研究が進められています。

こうした研究の中で、イヌとオオカミは遺伝子的にも近いということもわかってきました。
現在ではオオカミがイヌの唯一の先祖である、と結論付けられています。

しかし、イヌの起源については諸説あり、今日においても決定的な解明はなされていません。イヌの祖先はオオカミだということはわかっていても、イヌがいつオオカミと分岐したのかがはっきりとはわかっていないのですね。



犬の起源

複数の有力な説を合わせると概ね今から1万5000年前〜3万3000年前にイヌがイヌとして存在していた、とされています。
この年代を人類史に当てはめると後期旧石器時代(約1万2000年前〜3万5000年前)と重なります。ネアンデルタール人やクロマニヨン人がいたとされている年代でもあります。
これらの説はイヌの家畜化を前提とするもので、ヒトの手による最初の家畜が行われた時期がイヌの起源になり、その時期と場所を特定することでイヌの起源が決まります。

これとは別に未知の(絶滅した)イヌ属が存在し、この動物から古代の(絶滅した)オオカミ、タイリクオオカミ、イヌがそれぞれ分岐したとする説があり、この場合の分岐年代はおよそ1万1000年前〜1万6000年前、あるいは2万7000年前と推測されています。 

さらに別の説としては、13万5000年前頃に4種類のオオカミよりそれぞれ独立してイヌが発生したとする説があり、いわゆるオオカミの突然変異説がこれに当たります。 この場合はヒトによる家畜化の遥か以前にイヌがイヌとして存在していたことになります。

いずれにしても途方もなく長い時間、少なく見ても1万年以上のあいだ、人と犬は生活を共にしてきたことは確かなようです。
そりゃあ世の中に犬好きがたくさんいても少しも不思議ではないですよね。


終わりに

近年では世界各地でイヌゲノムの解析比較、ミトコンドリアDNAを用いた研究が進み、過去に発掘された化石の再調査も行われていて、これまでの定説を覆すような報告も数多くなされています。

また、まだ見つかっていない化石が未来には必ず発見されます。世界中の熱い研究者たちの驚くべき探究心と行動力によって、きっと近い将来にイヌの起源が解明される日が訪れるでしょう。

全ての動物の中で、私たち人間にとって最も身近な存在である犬。
犬の歴史の全貌が明らかになれば、人類の歴史、果ては地球全体の歴史の解明にも近づくような気がします。

ウチのワンコを見ていると、そういった妄想もより一層楽しくなり、より一層愛おしい気持ちになります。



※ 犬の歴史についてもう少し詳しく知りたい人はこちらの記事をご覧下さい。
少し長いですが、大まかな流れがわかります↓

犬の歴史|イヌの起源、人との関わり、古代・中世そして現代



0 件のコメント :

コメントを投稿